薬剤師ライター・ノブコの市販薬・処方薬あれこれ

薬剤師ライターの市販薬・処方薬あれこれ

市販薬(OTC)・処方薬(医療用医薬品)についての解説記事です。

「オルミエント」円形脱毛症についてMRから教えてもらえること(たぶん)

オルミエントに円形脱毛症の効能・効果が追加承認されました(2022年9月)。

円形脱毛症の飲み薬として日本では約30年ぶり、米国で最初の新薬となるそうです。

これを機会に、円形脱毛症について調べてみました。

 

今回は、製薬会社から「円形脱毛症」について教えてもらえる(であろう)内容についてざっくりお伝えします。

 

円形脱毛症の概論

円形脱毛症とは

円形脱毛症」とは、円形や楕円形の脱毛斑が突然生じる疾患です。

一般的には10円玉くらいの脱毛と思われていますが、頭部全体に広がるものや、眉毛やまつ毛、体毛などに及ぶ重度のものまで、その症状は様々です。

また、場合によっては、完全に発毛しても再発することもあります。

 

円形脱毛症の患者数

日本

日本での調査は存在しませんが、罹患率は全人口の 0.1%〜0.2%、約 12 万〜24 万人の円形脱毛症患者が存在すると考えられています。

参考:バリシチニブ申請資料概要/PMDA

 

海外

米患者支援財団によると、円形脱毛症の患者数は軽症も含めて世界で約1億4700万人、米国で約680万人と推計されています。

参考:日本経済新聞電子版

 

円形脱毛症の原因

円形脱毛症の原因については、様々な説が提唱されています。

 

自己免疫疾患

円形脱毛症は、Tリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられており、その激しい攻撃により毛根が傷んで、元気な髪の毛でさえ突然抜け落ちてしまいです。

しかしなぜその様な異常が生じてしまうのかは、まだ明らかになっていません。

また円形脱毛症は、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、あるいは重症筋無力症などの各種自己免疫疾患と併発する場合があります。

特に、甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の患者が、円形脱毛症を併発していると言われています。

 

アトピー素因

円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持つと言われ、半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因が認められるなど、深い関連があるとされています。

 

精神的ストレス

精神的ストレスを受けると、それに抵抗するために交感神経が活発に動きます。

このとき、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると、交感神経に異常をきたします。

その結果、血管を収縮させ、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなって脱毛が引き起こされると考えられます。

 

遺伝

中国で行われた大規模な調査によると、円形脱毛症患者の約8.4%に、同じ病気を抱えている家族がいると報告されています。

それは親等が近いほど発症率が高く、欧米の調査でも、円形脱毛症患者の一親等の発症率は、二親等以上の家族の10倍に及ぶという結果が出ています。

このことから、円形脱毛症には遺伝的要因が関係する可能性が高いと考えられています

 

出産後

妊娠中、体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加しています。

それが、出産すると一気に通常値に戻ります。

女性ホルモンには発毛促進の作用があり、逆に減少すると抜け毛につながることから、毛周期との関係で産後3~4ヶ月後に抜け毛が多くなります。

多くの場合は頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛となりますが、このときに、円形脱毛症になることがあります。

ちなみに産後脱毛に効く薬はありません。つらいですが時間の経過を待ちましょう。

 

円形脱毛症の治療

薬物療法、冷却治療、紫外線療法、直線偏光近赤外線照射療法、かつらの使用などがあるようですが、ここでは薬物治療についてとりあげます。

円形脱毛症診療ガイドライン(2017 年版)では、ステロイド局所注射療法、局所免疫療法、ステロイド外用治療が推奨されてます。

 

推奨されている治療法

ステロイド局所注射療法

脱毛部位に副腎皮質ステロイドを直接皮内に注射していく方法です。

脱毛の範囲が広くない場合には有効な治療ですが、脱毛部位が広いとそれだけ注射回数が多くなります。

 

局所免疫療法

SADBE、DPCPといった化学物質を脱毛部位に外用しアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)を繰り返し起こすことで免疫バランスを変化させます。

広い範囲に脱毛がみられる患者さんでも思いがけないほど有効である場合があります。

SADBE(squaric acid dibutylester):スクアレン酸ジブチエステル。医薬品ではない。
DPCP(Diphenylcyclopropenone):ジフェニルシクロプロペノン。医薬品ではない。

 

ステロイド外用治療

一般的な治療法として多くの皮膚科で採用されており、国内で豊富な治療実績があります。

 

その他の治療法

ヒスタミン薬の内服、セファランチン内服、グリチルリチン・グリシンメチオニン配合錠の内服(グリチロン配合錠ほか)、カルプロニウム塩化物の外用(フロジン液ほか)、ミノキシジル外用(OTC医薬品)等があります。

 

オルミエント(一般名:バリシチニブ)

ヤヌスキナーゼ(JAK)1及びJAK 2に選択性を有するJAK阻害剤であり、「関節リウマチ」、「アトピー性皮膚炎」、「SARS-CoV-2による肺炎」に対する効能・効果を取得しています。

2022年6月、新たに「円形脱毛症」の効能・効果が追加されました。

新薬ではないので2週間の投与制限はありません。

 

ただ、オルミエント4mgを1日1回、maxの36週投与すると、

5274.9×7day×36week=130万超え・・・

3割負担でひと月4万超え

高額医療費の対象になるかどうかは収入次第ですね。

 

JAK阻害薬についての説明はコチラ
(リウマチ学会のHPへ飛びます)

 

開発中の新薬

ファイザーから「リトレシチニブ」が、2022年8月に承認申請されています。

 

まとめ

イーライリリー社の調査によると、円形脱毛症の原因を免疫機能の異常と知る人は4人に1人以下、また、患者全体の7割が罹患していることを隠したいと考えているようです。

理解が正しく進み、この新薬が円形脱毛症に悩む人の手助けになることを期待しております。(お値段高いけど)