薬剤師ライター・ノブコの市販薬・処方薬あれこれ

薬剤師ライターの市販薬・処方薬あれこれ

市販薬(OTC)・処方薬(医療用医薬品)についての解説記事です。

ジェニナックを飲むときの牛乳は本当に2時間後?【海外論文より考察】

ジェニナックと牛乳との飲み合わせについて添付文書では次のように記載されています。

でも、処方せんの指示が「朝食後」の場合、朝1杯の牛乳を飲むのに2時間後じゃ遅すぎる。

そこで、添付文書の参考文献を調べてみました。

 

海外文献の検索ではおなじみのPubMedでざっくりと検索をかけます。

 

あとは原文のまま読んでも、翻訳して読んでも自在です。

私は翻訳してざっと意味をつかんでから原文で確認しています。

結果は次の通りでした

■対象
健康成人20人

 

■方法
20人を次の6つの服用方法のうち3つに当たるよう割り当て、ガレノキサシンの薬物動態を評価した。
①ガレノキサシン 600mgを単独服用
②ガレノキサシン 600mg+制酸剤(同時服用)
③ガレノキサシン 600mg+制酸剤(ガレノキサシン服用2時間後に制酸剤服用)
④ガレノキサシン 600mg+制酸剤(ガレノキサシン服用4時間後に制酸剤服用)
⑤ガレノキサシン 600mg+制酸剤(制酸剤服用の2時間後にガレノキサシン服用)
⑥ガレノキサシン 600mg+制酸剤(制酸剤服用の4時間後にガレノキサシン服用)

注;制酸剤:水酸化アルミニウム900mg+水酸化マグネシウム800mg

 

■結果
ガレノキサシンを制酸剤と同時投与、制酸剤投与の 2時間後投与、4時間後投与により、ガレノキサシンの吸収(AUC)はそれぞれ58%、22%、16%低下した。
制酸剤の 4 時間前投与ではガレノキサシンの吸収に影響はなかったが、2 時間前投与によりガレノキサシンの吸収が 11.6%低下した。

参考:Krishna G, et al.:Pharmacotherapy. 2007;27:963-969、ジェニナック錠インタビューフォーム

 

この結果を受け、ジェニナックを服用する場合には次のように注意喚起されています。

カチオン(アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛)を含有する製剤と併用する場合は、本剤の効果が減弱されるおそれがあるため、本剤との同時投与を避け、本剤服用後 2 時間以上あけて投与するよう注意すること。

引用:ジェニナック錠インタビューフォーム

 

ただ、先ほどの論文からジェニナックの用量600mgと制酸剤の用量が気になるところです。

日本でのジェニナックの用量は1日400mg、牛乳のカルシウム量はコップ1杯(200mL)227mgです。

ジェニナックの用量は論文の2/3、制酸剤の用量は論文の1/8位の用量です。

 

  論文 実際
ジェニナック 600mg 400mg

制酸剤

Al:900mg+Mg:800mg Ca:227mg

Al:水酸化アルミニウム、Mg:水酸化マグネシウム

 

コップ1杯程度のカルシウム量で、ジェニナックの吸収がどれだけ阻害されるのか・・・悩ましいところです。

 

この結果を受け、私が服薬指導に取り入れていることは次の通りです。

・ジェニナックは1日1回なので、牛乳を飲まない昼や夜に服用してもらう
・ジェニナックは食事の影響を受けないため食前に服用してもらい、牛乳やミネラルウォーターは気持ち遅めに飲んでもらう

 

日本人への服薬指導はこんな感じで良いかな〜と。